固体高次高調波発生における乱れの効果

2020/01/13

オープンサイエンス 研究成果

t f B! P L

研究成果が論文として出版されました。
オープンアクセスで、どなたでも無料で読めますので、
試しにクリックして見て頂けると嬉しいです。
Disorder effects on the origin of high-order harmonic generation in solids

雰囲気解説

光は物に当たると、通り抜けたり反射したりしますが、普通その色は変化しません。ところが、最先端のめっちゃ強い光(レーザー)を物に当てると、違う色の光が出ることがあります(実際には人間の目で見えない赤外線・紫外線であることが多いですが)。こういう現象を高次高調波発生(high-order harmonic generation)と言います。

実はこの現象は従来、光を気体に当てて研究されて来たのですが、最近固体でも観測されるようになり、理論・実験で活発に研究が行われています。固体でこの現象を自在に操れるようになれば、光の色(周波数)を変化させる技術にも繋がるので注目をされています。

我々の今回の研究では、固体からの高次高調波発生のメカニズムの理解を深めるために、結晶の乱れがこの現象に与える影響を理論的に調べました。その結果、乱れがあると高次高調波発生の効率が低下することや出力スペクトルの形状が大きく変わることを見出しました。この結果は、固体からの高次高調波発生のメカニズムが、気体からのそれと質的に異なることを示唆しています。

ざっくり説明は以上です、より詳しい情報はページ上部のリンクより論文をご覧下さい!

研究の裏話

研究の構想自体はなんとなく描いていたものの、
実際に計算すると自分では上手く行かない所があり行き詰まりました。
と同時に、所属研究室の大学院生のC君が得意とする計算手法を
自分の問題に適用すればうまく行くのではないか?と思い立ち、
彼に協力を依頼すると、するすると問題を解いてくれました。
これが2019年4月ごろの状況。

それから5月に論文を書き上げて、
(とあるハイレベルな雑誌に蹴られましたが) 12月に無事に採択されました。
C君は初めて筆頭著者として英語論文を雑誌に通したわけですが、
初めてとは思えない総合力で、非常に助かりました。
当時の自分は、英語力も文章力も常識力(?)も、足元にも及びません笑

個人的な考えですが、大学院生にとって、
論文を一つ雑誌に通すことがとてもとても重要だと思っています。
研究の始めから終わりまで一通り経験することで、
教科書では学べない様々なことが経験として身に付きますし、
成功体験を積むことで今後の研究にいい影響があると信じているからです。
逆に言うと、一度もゴールを経験していないと、
今自分がどの地点にいるのか分からず、精神的にもストレスが掛かります。

C君には、自分が教えられることは特にもう無いですね笑
彼が今後、ますます良い研究をして
サイエンスに貢献することを応援したいと思います。


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自己紹介

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東京大学 物性研究所 (柏キャンパス) で物性物理学の理論研究をしています。 ブログは最近撮り始めた写真の公開と日記を中心につらつら書くつもりです。 ごくたまに、研究活動に関わる有益な情報を発信出来たらいいなと思っています。

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