物理学者というキャリア選択

2020/01/22

キャリア 大学院生

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物理オリンピック金メダリストの話

業界では話題になったインタビュー記事を読みました。
「東大卒・物理オリンピック金メダリストの28歳が、自分のキャリアを"損切り"できた理由。」


東大卒・物理オリンピック金メダリストの28歳が、自分のキャリアを"損切り"できた理由。 - エンジニアtype | 転職type

彼は出身が同じ研究室で、
直接面識があるので、単純にびっくりしました笑
記事には、彼らしい飾らない素直な意見が書かれていて
とても好感を持ちました。

記事にある通り、彼は高校生の頃に
国際物理オリンピックに日本代表の1人として出場して
金メダル受賞という輝かしい実績で研究室に入って来ました。
まぁ控え目に言って天才で、僕の100倍は優秀でしょう笑
物腰柔らかでユーモアのセンスもあって、素晴らしい人物でもあります。

そんな人物を、大学と企業で引き合ったらどうなるか。
待遇面で大学に勝ち目が無いのは明らかです。

インタビュー内で、強調されていたのは「安定性」です。
最近は、大学に残る道を選択した場合30歳手前で博士号を取って、
それから任期付きの職を転々として、終身雇用の職を目指します。
職を転々とする間、次の職を得るために
成果を出し続けなければならないプレッシャーに晒され続けます。
職が任期付きになる傾向は今後も続きそうですし、
安定性を求める人が企業就職を選択するのは
極めて自然なキャリア選択です。

自分の話

自分は博士課程3年のはじめ頃、研究者の道を選択しました。
自分で出来ることが増えてきて研究が楽しくなってきた頃で、
研究を仕事にしたいなと。後先あまり考えていない感じですね。

ちなみに、企業の研究所は待遇が良いし、
自分のやりたい研究が出来るならいいだろうと思い、1社受けました。
面接で自分の研究ビジョンを熱く語ったら
「ウチには合わない」的な感じで落ちて、妙に清々しかったです笑

それで腹を括ってポスドクの職を探し、
海外学振に採用されて、日本から給料を貰いながら、
アメリカで研究員をやりました。これが2年契約。

事前に分かっていたことだけど、2年は短い。
新天地に移動して生活・研究の基盤を立ち上げていたら
次の職探しなんてあっという間にやってきます。
去年決心したばかりなのに、
根は心配性ですから、精神的に弱っていました。

早め早めの行動が大事と思って、
ポスドク1年目から職探しをしていたら、
運良く今のボスに拾って頂き、今に至るという感じです。
5年任期の助教、更新は審査の上1回だけ可能。

2年契約のポスドクに比べると安定しましたし、
業界を見渡しても非常に恵まれていると思います。
とは言え、最大10年経過すると無職になるので
それまでに成果を出して別の大学への就職を目指している所です。

今までのところ自分は業界にいられていますが、
一番重要な要因は何かと言われれば「運」でしょうね。
タイミング良くポストに空きが出るか、
そこに自分がフィットするのかなど、
自分でどうこう出来ない事情が就職の命運を握ります。
自分の次の職探しでも、出来る努力はやりますが、
最終的には「運」が重要になるでしょう。

こうして見てみると、やはり「安定性」とは程遠い笑
とは言え、安定性というのは相対的なものでもあります。
サラリーマンよりは明らかに不安定ですが、
起業家・個人事業主と比べればどうでしょうか。
なんとなく働き方にも共通点がある気もします。

自分は最近そういう風に考えるようにしています。
安定に対する感覚が麻痺しただけかもしれませんが笑
今の任期が切れて業界にいられなくなった場合は、
サラリーマンになるのも難しいでしょうし、
(今で言う) YouTuberとか目指すのかなと思っています。

おわりに

言うまでもなく僕の経験はあくまで一つの事例なので参考程度にお願いします。
最近は博士の企業就職の状況も良いらしく、選択肢が多くあるのは喜ばしいことです。

人生に絶対的な成功や正解はありませんから、キャリア選択に当たっては必要十分な情報を収集して、自分の価値観だけに従って決断すれば、それがその人にとっての正解に違いありません。





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東京大学 物性研究所 (柏キャンパス) で物性物理学の理論研究をしています。 ブログは最近撮り始めた写真の公開と日記を中心につらつら書くつもりです。 ごくたまに、研究活動に関わる有益な情報を発信出来たらいいなと思っています。

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