General description for nonequilibrium steady states in periodically driven dissipative quantum systems

2020/03/14

オープンサイエンス 研究成果

t f B! P L

研究成果のプレプリントをarXivで公開しました。
無料でどなたでもアクセス出来るので
試しにクリックして見て頂けると嬉しいです。

General description for nonequilibrium steady states in periodically driven dissipative quantum systems

雰囲気解説

物理には平衡状態・非平衡状態という言葉があります。例えばカップに入った熱いコーヒーを放置すると、だんだん温度が下がって、最終的には温度が部屋の温度と同じになって、コーヒーには変化が起きなくなります。こうして変化が起きなくなった状態のことを「平衡状態」と言い、それに対して温度が下がる途中のコーヒーのように変化がある状態のことを「非平衡状態」と言います。

コーヒーにしても、金属にしても、空気にしても、基本的にどんなものであっても、その平衡状態の性質を計算する理論的な枠組みは(平衡)統計力学として確立しているのですが、非平衡状態について同様の理論はまだ良く分かっていません。各論として色々な非平衡状態の研究はありますが、統一理論のような枠組みはそもそも存在するのかさえ良く分からないという状況だと思います。

今回の研究は、ある特別な状況設定の範囲で、非平衡状態の記述を発見したというものです。その状況設定とは、「(時間的)周期駆動下の散逸系」です。周期駆動というのは、例えばスマホのバイブレーションのように、繰り返し同じリズムで揺さぶられることです。こういう揺さぶりがあると、物はずっと平衡状態にはならず、非平衡状態のままになりますが、この非平衡状態の記述を見つけたということです(揺さぶりが十分速いときに限る)。あと、散逸系というのは摩擦などがあってエネルギーが逃げていく状況です。

スマホの例を出しましたが、一番念頭にある状況は物質にレーザーが当たっている状況です。レーザー技術がどんどん発達して、レーザーによる物質の操作などが活発に研究されている昨今なので、今回見つけた公式は役立つはずです。

研究の裏話

この研究はもともと共著者のSさんが
大学院生と進めていた研究が元になっています。
その院生が卒業して、やりかけの断片が残っていて
「池田君、これ完成させてくれない?」
と、そういう流れで始まりました笑

話を聞いてみると、断片のうち一部が面白そうだったので
そこだけを切り出して研究を進めるとどんどん話が広がって、
当初の予想を超える発見が色々とありました。

とても良い感じの研究にまとまったので
記念受験的にハイレベルな雑誌に投稿しました。
ハイレベル雑誌は査読に回る前にリジェクトも多いですが
嬉しい誤算でそこは突破したので、この先どうなるかドキドキです。

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自己紹介

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東京大学 物性研究所 (柏キャンパス) で物性物理学の理論研究をしています。 ブログは最近撮り始めた写真の公開と日記を中心につらつら書くつもりです。 ごくたまに、研究活動に関わる有益な情報を発信出来たらいいなと思っています。

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