研究者の世界は、論文を出版し続けなければ職が無く
業界を去らざるを得ない、大変厳しい競争社会です。
自分は任期付きの身分で、
特にそのプレッシャーを感じながら
日々頑張っているわけですが
論文という成果に縛られ過ぎて
純粋に科学を楽しむ余裕が無いな、と思います。
論文になりそうな研究テーマというのは
それだけ先が見通せているわけで
驚きに満ちた結果が得られる可能性もその分、低いです。
本来的には、心から不思議・知りたいと思ったことを
好奇心の赴くままに研究して、
そうして得られた成果を論文にまとめるものですが、
なかなかそう悠長なことも言っていられず。。
科学者が職業になった時から、そういうジレンマはあるのでしょう。
こういうことを考え出すと
モチベーションも下がってしまいますが、
そんなとき自分が読み返す本の一つが
「精神と物質 - 分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか -」

ノーベル生理学・医学賞の利根川進先生の本
(立花隆氏のインタビューの書き起こし)です。
競争は大変だよね、などと慰めてくれる本では一切無く、
科学者に厳しい言葉が色々書かれていて
大いに叱咤激励を頂ける本です笑
あと、ノーベル賞になった、
抗体の多様性の研究の経緯をリアルに語ってくれて、
科学の面白さや迫力が感じられる好著です。
自分の好きな叱咤激励を一つ引用します:
サイエンスというのは・・・・こまかいことをほじくり出したら研究対象なんていくらでもあるわけです。だけどその大半は・・・・どうでもいいことなんですね。だけど大半の学者は・・・・どうでもいいことを追いかけて一生を終っているわけです。サイエンティストの大半はその手のどうでもいいことを研究している人たちですよ。彼らはサイエンティストを自称して、サイエンスをメシのタネにしてはいるけど、サイエンスの側から見たら、いてもいなくても関係ない人たちなんですよ。
胸に刺さりますね笑
本当に重要な問題を見極めて
勇気を持ってそれにフルスイングするような
そんな研究ライフを送りたいものです。
任期の問題でしょうか、それとも志の問題でしょうか。
フルスイングで空振りして業界を去ったとしても
サイエンスの側から見れば、そっち方が価値があるかもしれません。
ま、凡人の自分としては、あまり極論に走らず、
うまくバランスを取るのが大事だと思います笑
利根川進さんの本、私も昔持ってました。時代もあってか、「これからは意識の問題も含めて、物理や化学の手法でわかるようになるゾ」 という勢いがありましたね。
返信削除最近読んだ「バッタを倒しにアフリカへ」と言う本(著者は昆虫学者)でも、論文書けるテーマか、本物を追うか、みたいな葛藤で池田さんと同じことが書かれていました(著者は後者を選んでアフリカに行って無収入になってしまうのですが…)。
面白いのでまだでしたら是非読んでみてください!
inunekoさん
削除まさに「勢い」ですね、本からすごいパワーを感じます。
バッタの本、早速電子書籍で買って読んでみました。軽快な書きっぷりで読み物として面白いです笑 ちょっと真似できない行動力ですが、葛藤も書かれていて参考になりました。ありがとうございます。